ヒップホップ系就職指南みたいな雑記

「どうすればヒップホップ業界で働くことができますか?」という相談を受けることがあります
渡辺志保 2025.01.29
読者限定

偶然だとは思うのですが、ここ最近「ヒップホップと仕事」にまつわる相談を立て続けに受けることがありました。「ヒップホップ業界で働くにはどうすればいいですか/ライターになりたいのですがどうですればいいですか」というようなDMは日頃からいただくことがあり、お会いできる方にはなるべく直接お会いしてお話を伺うようにしています。

それと、最近、Apple TV+で配信されている”ワーク・ライフ・バランス”をテーマにしたサイコ・スリラーTVドラマ、『セヴェランス(原題:Severance)』にハマっていて、自分の仕事環境についてめっちゃ考えてしまいがち。

他のインタビューなどでもお話ししているのですが、私が「自分が好きなヒップホップについて書いたり伝えたりする仕事がしたい」と明確に志すようになったのは高校生の時で、2000年に入ってすぐくらいの時でした。地元の広島にいたら自分が希望する職には就けないと思ったのと、渋谷で遊んでみて〜という思いが募り、2003年には東京の大学に進学し、そこから渋谷を中心とするクラブに通い詰めて徐々に人脈を広げていきました。就職してしばらくしてから自分のブログを開設して、主に海外のヒップホップのニュースサイトで仕入れた情報を自分なりに噛み砕いて書いてみたり、自分が聴いた新譜のレビューみたいなものを書いてみたり、普通にクラブで遊んだ記録を書いてみたり…という活動を始めました。その時にはもうヒップホップ専門誌の『blast』は休刊していたのですが、そこの編集長だった伊藤さんが『Amebreak』というウェブ媒体を担当していたのは知っていたので、「伊藤さんに届け!」と思いつつ、当時、老舗ブラックミュージック専門誌『bmr』はまだ月刊誌として存在していたので「(当時の編集長の)小渕さんに届け!」など、割と明確に自分の目的達成のために届けたい方達を設定していました。実際に、渋谷のクラブで知り合った師匠みたいな方が小渕さんと私を繋げてくれて『bmr』にライターとして参加できるようになったし、渋谷の飲み会みたいなところで知り合った業界の先輩が伊藤さんのことも繋げてくださり、その縁もあって『Amebreak』の企画にも参加できるようになり、そこから間口が広がっていきました。2011年にはDJのYANATAKEさんにお誘いいただき、block.fm「INSIDE OUT」というラジオ番組にも参加させてもらうことになりまして、そこからはラジオの仕事や予想もしていなかった司会の仕事なども増えていきました。

今、いろんなアーティストの方にインタビューしたり企画に携わらせてもらったりしながら仕事をしているのですが、それは2003年に上京してからコツコツ(という感覚でもないけど)と積み重ねていったものがようやく仕事になっていった…という感じです。ありがたいのですが、名刺やポートフォリオを持参して営業活動をしたこともなく、昔から知っている人、しかも夜のクラブやライブ会場で出会った人から仕事をいただいて、それが広がっていって…というケースが多いです。そして、私がこうしたヒップホップ関連の仕事だけで生活していけるようになったのは日本のヒップホップ・ブームの動きと重なると思います。Awichのアルバム『8』のリリースが2017年で、BAD HOPの日本武道館公演が2018年だったので、それ少し後くらいから私も食っていけるようになった感じです。それまでは音楽レーベルで働いていました。

なので、若い方から相談を受ける時にも「とりあえず、外に行っていろんな人と会ってみて」とお伝えすることが多いです。あと、会社員経験も積んでおいてよかったな〜と思うことも多いので、気が進まないかもしれないけど、一度は就職してみることもおすすめです。

しかし、今はSNSが発達した時代なので、出会い方や人脈の広げ方もさまざまですよね。アーティストの方に「この曲にフィーチャリングで参加しているXXXというアーティストとは、どうやって知り合ったのでしょうか?」と聞くと「直接会ったことはないんですけど、XXXくんが俺にDMをくれて、そのままコラボしようってことになったんですよ〜」みたいな答えを聞くことがめちゃくちゃ増えました。ラッパーでもビートメイカーでもMVディレクターでもデザイナーでも、こんな感じでSNSで繋がって作品が完成する、という話は全く珍しくない。私も、以前は「会ったことがない人からの仕事は請けない」というヒップホップ業界にありがちな勘繰りイズム全開って感じだったのですが、今やそんなことは全くない(とはいえ勘繰り癖はある)なので、直接現場に行かなくても全然成功できると思います。ただ、これはやはり表現者の場合に限られることが多いのかな〜とも感じる。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、2103文字あります。

すでに登録された方はこちら

読者限定
【長文】ケンドリック・ラマーのハーフタイムショー解説
読者限定
第67回グラミー賞ヒップホップまとめ&素晴らしかったスピーチ
読者限定
活況な国内ヒップホップのライブ&フェスとは裏腹にキャンセルが続く海外ラ...
読者限定
脳出血で倒れてしまった…という報告です
読者限定
年齢を重ねたラッパーは何をラップすべきなのか
誰でも
「茶話会」イベント御礼〜日本のヒップホップ離れ小島、フェスのジェンダー...
誰でも
【告知】トークイベントを開催します!
読者限定
歯にベニアを貼る〜ギャルのことを知りたい!