【長文】ケンドリック・ラマーのハーフタイムショー解説
さる2月10日(日本時間)に第59回スーパーボウルが開催され、ハーフタイムショーではケンドリック・ラマーがパフォーマンスを行いました。以下、私なりの解説を記しておきたいと思います。
その前に、池城美菜子さんによる記事を貼り付けておきます。そもそも、みたいなところはぜひ池城さんの徹底解説で確認してみてください!
セットリストとアンクル・サムの風刺芸
池城さんの記事にもありますが、今回、パフォーマンスにおいてさらにピリリと効いたスパイスを足してくれたのがサミュエル・L・ジャクソン扮する"アンクル・サム”でした。アメリカをカリカチュア化した存在のサム。ここでは、ブラック・アメリカを象徴するとともに”白人に気に入られる(媚びた)黒人"を体現していたように感じました。そうした意味では、"アンクル・トム"的でもありますし、白人向けにテンプレ化した芸を行おうとする姿はミンストレル的でもある。以下、セットリストとケンドリック(KL)、アンクル・サム(US)のセリフを記します。セットリストはこちらを参考にしております。
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US「さあさあ、君たちのおじさん、サムの登場!これがグレート・アメリカン・ゲームだ」
1. アルバム『GNX』のティーザーで流れていた未公式発表曲(Unknown)
KL「革命の瞬間がテレビで放送されるぜ!タイミングはバッチリだけど、人選を誤ったみたいだな」
2. squabble up
US「ノーノーノーノー!!やかましすぎるし、無茶しすぎるし、ゲットーすぎるじゃないか!Mr.ラマー、君は本当にゲームのやり方を分かっているのか?もっとしっかりしろ!」
※ダンサーたちがアメリカ国旗の配色に並ぶが、中央に立つケンドリックのラップが始まると左右に"分断”される
3. HUMBLE.
4. DNA.
※カメラが移動し、刑務所の庭からコンプトンのストリートを模したセットの上へ移動
※「DNA.」が終わると観客席に”WARNING WRONG WAY(警告:進入禁止)"の文字
5. euphoria(Part IIのみ)
6. man at the garden(ライブでは初披露)
※街角にたまる黒人男性たち
US「おいおい、地元のダチ(homeboy)を連れてくるのは古典的なカルチャー裏技(culture cheat code)だ。スコア・キーパー、ライフが一つ消えたぞ」
(この時、10名の黒人男性たちがケンドリックの背後に。オークランドのダンス・クルー、Turf Feinzのメンバーたちだそう。ちなみにこのあとのセットでは街灯の上に寝そべるダンサーが6名で、他のダンサーの衣装とは異なるダンサーが計16名いるのだが、これは「wacced out murals」のリリック"I done lost plenty friends, sixteen to be specific(俺はたくさんの友達を亡くしてきた。正確に言うと16人だ)"と符合するとの深読み考察も。となると、USが言う「ライフが一つ消えた」というセリフも、実際にフッドの黒人男性の命がまた一つ失われた、と言う意味にも取れる)
7. peekaboo(ライブでは初披露)
KL「みんなのお気に入りソングをやりたいんだけど、あいつらは訴えるのが好きだから」
女性ダンサーたち「何の曲?」
と言う「Not Like Us」に関する寸劇アリ。
US「お〜い、頭がおかしくなっちまったのか!?」
8. luther(with SZA、ライブでは初披露)
9. All the Stars (with SZA)
US(SZAの歌声をやや遮るように)「いや〜、これだよこれ!アメリカが欲しがっているのは、こういうナイスで落ち着いたやつだよ!終わりまでもう少しなんだから、無茶しないでくれよ」
KL「これはカルチャー的分断だ」
女性ダンサーたち「本当に(あの曲を)やっちゃうの?」
KL「これは40エーカーと一匹のラマ。音楽よりデカいんだ。あいつらはゲームを不正に操作しようとしたけど、影響力は誤魔化せないみたいだな」
10. Not Like Us
"マスターーーーーーーーーーード"とともにDJマスタード登場
11. tv off
KL「Turn the tv off, turn this…」でラップを終わり、そのあと「ピー音」が被る。客席には「GAME OVER」の文字。
ゲームを表現したシンボル
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- アメリカ、そして人種問題を背負うパフォーマンス
- ラップ・セントリックなセットリスト
- 「Not Like Us」が示すユニフィケーション
- それぞれの衣装とUNIQLOのAIRismTシャツ
- まとめ
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